学生時代はボランティアをしていたけれど、社会人になってからはさっぱり、という方、多いのではないのでしょうか?
やはり「ボランティア」や「寄付」というと「時間やお金にゆとりのある人が行うもの」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、社会貢献とはかけ離れたものであると考えられがちの「企業」も、実は「社会貢献」と深い繋がりがあるのです。
利益を求める企業が、なぜ社会貢献活動を行うのでしょう?
そもそもCSRとはどういうものなのでしょう?
今回は「企業と社会貢献」についてご紹介していきます。
CSRとは
CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略。
「企業の社会的責任」と訳されます。
利益の追求だけでなく、従業員や消費者、地域、自然環境などに配慮をして企業活動を行うことをさします。
2003年に株式会社リコーがCSR室を作ったのをきっかけとして、日本でもCSRに取り組む企業が増加。
この年はCSR元年ともいわれています。
自社の利益だけでなく
CSRの考えのもとになっているものに「ソーシャル・マーケティング」があります。
ソーシャル・マーケティングはマーケティングの手法の一つで、アメリカの経営学者で「近代マーケティングの父」とも呼ばれている、フィリップ・コトラー氏によって1971年に提唱されました。
企業がマーケティング活動をすること自体に、消費者からの批判を受けていた1960~1970年代。
消費者の保護を求める運動が各地で起こりました。
日本でも公害被害を受けて、消費者のパワーが強くなっていきましたね。
このような消費者保護運動を「コンシューマリズム」とも言います。
企業は自社の利益だけでなく、消費者のことを考えつつ事業展開をしていく必要性が出てきます。
そこで、社会的な主張を訴え消費者の共感を得る、ソーシャル・マーケティングの考えがうまれました。
ちなみに、現在ソーシャル・マーケティングは2つの意味で用いられています。
1つはコトラーが提唱した、営利企業が社会的価値を発信していくこと。
もう1つが、学校や病院、NPOといった非営利団体が、マーケティングの手法を取り入れていくことです。
営利非営利の双方が、互いに歩み寄っていく動きが世界的にみられているのです。
CSRの考え方は古くからあった
実はCSRの考え方は、古くからもあったのです。
それは近江商人の「三方よし」。
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」を大切にする考えのことを指します。
近江商人たちは、商売上手であったことで知られていますが、利益のなかから橋や学校をつくったりと、地域の発展に大きく寄与していきました。
自分たちの利益だけでなく、顧客のこと、社会全体のことを考えていたのです。
近江商人たちが大切にしていた「三方よし」の考えは、今でも伊藤忠商事、高島屋、トヨタ自動車といった著名な企業にも引き継がれています。
日本人の精神には、古くから他者のことを思いやる心が宿っているのですね。
営利企業が社会的活動に取り組むメリット
社会や環境への配慮が必要とは言ってもやはり、企業は自分たちの活動を続けるためには利益をあげることを一番にしなければなりません。
近年、こんなにも社会的活動が注目されている理由とは、一体なんなのでしょうか。
消費者にとって
社会貢献を通して、企業のイメージアップをはかるマーケティング手法を「コーズマーケティング」といいます。
環境保護や海外支援など、商品を購入することで社会貢献ができることを消費者に訴求し、企業のイメージアップを狙っていきます。
日本でもコーズマーケティングを導入している企業はたくさんあります。
有名どころで言えば、森永製菓の「1チョコ for 1スマイル」。
森永製菓が、国際NGO団体である、ACEとプラン・インターナショナルと協働で行っているキャンペーンです。
DARSなどの対象商品を1箱購入すると、1円がカカオの国の子どもの支援として寄付されるというもの。
寄付金は、カカオ生産地で暮らす子供たちの教育支援として使われます。
カカオ生産地では、児童労働が課題となっています。
また、農業に対して十分な知識を得ることができず、農薬を過剰に使用してしまったり、森林を伐採してしまっていることも、問題になっています。
このような状態が続いてしまうと、チョコレートの原材料となるカカオを安定的に輸入できるかどうかが、新しい課題として浮かび上がってきます。
いずれ起こりうる「原料の輸入」という課題と、消費者に対する「社会に良いアピール」
この2つを、森永製菓ではうまく取り入れています。
生活者の「社会的意識・行動調査」結果 50%超の生活者が、商品の「安さ」より「社会性の高さ」を評価! より筆者作成
また、消費者自体の思考も、変わりつつあります。
実際に、生活者の社会的意識や行動を探るためのアンケートでは、55%の消費者が「安いもの」より「より良い社会づくりにつながる商品」を評価しているとわかりました。
このように、自社がいずれ直面するであろう課題に対しても、向き合うことができるだけでなく、他社との差別化につながっているのです。
就活生にとって
企業が社会貢献活動をしているかどうかは、就活生にとっても大事な指標になっています。
2020年4月入社として大卒で就職活動をする学生を見てみましょう。
1997年生まれの場合、ボランティア元年とされる、阪神淡路大震災のあった1995年以降に生まれています。
また、中学生という多感な時期に、前代未聞の大震災、東日本大震災が起こっています。
そのこともあって、高校や大学で「社会貢献活動に関わってきた」という学生が多くいます。
うまれたころから社会貢献が身近にある昨今の就活生。
企業選びでも、CSR活動を参考にしており「新聞は読んでいないがCSRレポートは読んでいるという就活生もいる」とか。
そして社会貢献活動に関わってきた学生は、主体的な学生が多いのが特徴です。
活動資金を獲得するため大勢の前でプレゼンテーションをした、という学生も少なくないでしょう。
プロジェクトを立ち上げるときには、企画や運営だけでなく、広報や人集めも行います。
そのため、企業に入ってからも必要とされるプレゼンテーション能力やチームワーク力、社会的ニーズをくみ取る能力が高いとされます。
優秀な人材を確保した企業は、このような近年の動向をみて、社会的取り組みをアピールしています。
投資家にとって
近年投資家に注目されている投資に「ESG投資」があります。
ESG投資とは、環境(environment)社会(social)企業統治(governance)に配慮している企業に行う投資のこと。
それぞれの頭文字をとって「ESG」と言われています。
日本でも、富士フイルムホールディングス、ブリヂストン、ホンダ、KDDI、味の素などがESG投資家に向けて取り組んでいます。
「従業員の労務管理はきちんとなされているか?」や「環境問題などの会社に起こりうるリスクを排除しているか?」といった、財務指標からでは見ることができない、長期的な成長可能性を見ることができると言われています。
たしかに、先ほどご紹介した「コーズマーケティング」では、森永製菓が原料の安定供給のために海外教育支援をしていたことを考えると「きちんと数十年後のことも考えているか」を判断する材料としては最適ですね。
2006年に国際連合によって提唱されてから、10年で世界ESG投資運用資産は23兆ドル。
総投資額90兆ドルの4分の1にまで到達しています。
より多くの投資家に注目してもらうために、企業は社会的活動をアピールすることが求められてきているのです。
実際のCSRの例
きふるで取材をした、企業の社会貢献活動の例をご紹介いたします。
株式会社サニクリーン
長年にわたり非営利法人の協賛をしてきた株式会社サニクリーン。
「お金以外の形で、もっともっと関わっていくことはできないか?」と「未来応援プロジェクトサニエール」を立ち上げました。
公式キャラクター「サニエル」がNPOの取材をしたり、ご当地キャラクターとバトルをしたりと、コンテンツ満載です。
日本リユースシステム株式会社
古着を送ると、途上国にポリオワクチンを寄付することができる「古着deワクチン」
寄付と事業を掛け合わせた、新しい形の社会貢献活動です。
さいごに
企業も消費者や投資家、求職者に選んでもらうため、さまざまな工夫をしています。
これからの企業は、ただ単純に利益をあげることだけを考えるのではなく、中長期的な視点で会社のこと、そして社会のことを考えていかなければなりません。
「営利」と「非営利」。
一見全く異なるものにも思えますが、実は意外な方法で協力しあっていたのですね。
ボランティアや寄付をはじめとする社会貢献は特別なものではなく、実は身近な場所にもあったことがわかりました。
まずはあなたのできることからサポートしていきましょう。
きふるに掲載しませんか?
あなたの会社の社会貢献活動、きふるに掲載しませんか?
きふるでは社会貢献を身近に感じてもらうため、サポーターインタビュー、団体紹介など社会貢献に関する記事を日々更新中!
「社会貢献」とは言うけれど、実はもう身近な場所にあったのでは?
企業がするCSR活動も社会貢献の1つなのでは?
……ということで、このたび企業の活動も取り上げていきます。
CSR記事のメリット
①会社のサイトではなく外部サイトで紹介されるため、第三者視点のページができる
②企業イメージが向上し、競合他社との差別化をはかることができる
③就職活動中への学生のアピールになる
④活動が外部サイトで紹介され、従業員のモチベーション向上につながる
などなど……。
詳細はNPO Marketing Laboをご覧ください。