結婚する人もしない人も、尊重される世の中になりました
2015年の国勢調査によると、日本では男性は4人に1人、女性は7人に1人が50歳までに1度も結婚しません
これは男女ともに過去最高の数値だそうです
配偶者を持たない場合、亡くなったときの財産は誰に引き継がれるのでしょうか
現在の法律では、遺産は国庫に納められます。
ところが、近年は遺産を社会貢献につかう「遺贈寄付」が注目を浴びています
では、この「遺贈寄付」とは一体どういうものなのでしょう
本記事では、遺贈寄付のメリット、方法、活用事例などにフォーカスしていきます。
遺族寄付とは
遺族寄付とは、亡くなったとき残った財産を寄付することです。
相続はなくなった人と一定の関係にある人(妻、子など)に渡されます。
一方、遺贈は譲る相手に制限はありません。NPO法人や公益法人、学校法人などの民間非営利団体、お世話になった人などに渡すことができます。
さらに、誰に何%与えるかも指定できます
なので、遺産6000万円のうち、配偶者とこどもに「相続」しお世話になった人やNPO法人にのこりを半分ずつ「遺贈」するということもできるんです。
遺贈寄付の種類
- 遺言で寄付
自分の財産を寄付する場合、法的に有効な遺言書を作成し、その中で財産を寄付する旨を記載します
第三者に遺産を分け与えることになるので、中立的な立場で遺産を分配してくれる人を決めましょう
これを遺言執行者と言います。
弁護士、司法書士、行政書士、税理士、信託銀行などの専門家に依頼をするケースが多いそうです
- 故人の遺産を寄付
相続財産から寄付をするメリットは相続税がかからないことです
相続税は、1000万以下でも10%、3000万円以下だと15%、1億円になると、30%が税金として持ってかれていきます
大切な人が残してくれたお金、せっかくなら全額有効に使いたいですよね
相続税の控除のためには、10ヶ月以内に、税務署に申告をする必要があります
寄付した団体から発行される「領収書」と「公益法人証明書」を忘れずに保管しましょう
- 香典を寄付
葬儀で香典や御花料をいただいた方々への「お返し」にかえて寄付をする方法です
家族だけでなく、葬儀の参列者にも、遺族や故人の想いを届けることができます
遺贈寄付のメリット
- 後世に残すことができる
使い道は自分で選ぶこともできます。
例えば、「自然が大好きだから、環境保護の団体に寄付したい」「母校にお世話になったから、母校に使ってもらいたい」「教師として働いていたから、教員育成を支援する団体に使ってほしい」など、自分の生きた証を残すことができます
- 必要な人に届けられる
財産を残す相手がいない場合、遺産は国庫に帰属されます
国庫になった場合、使い道は選ぶことができません
しかし、お世話になった学校、ひと、団体に寄付して、その人たちが満足する使い方をしてもらったほうが、嬉しくありませんか?
寄付金の活用事例
実際に遺贈はどうやって使われたのでしょうか。
日本財団での例をご紹介いたします。
看護師の育成
君和田スイさんの一人娘、君和田桂子さんは、念願だった看護士になる直前に交通事故で不慮の死をとげました。
君和田スイさんの遺産を相続した3人の姉妹は、その遺産を寄付し「君和田桂子基金」を設立しました。
この基金は、看護士が中心となってすすめる「ホームホスピス」の開設を目的に、10年間にわたり、約30事業に対し支援を行いました。
新しい終の棲家として注目を集める「ホームホスピス」は君和田桂子基金の支援により全国に広がっています。
ミャンマーで障害児とその家族の支援
ある女性の遺言書には「世界の貧しい子どもたちのために」とかかれていました。
そこで遺贈寄付をサポートしている日本財団が、遺贈でミャンマーの知的障がいを持った子どもたちの学校を建設。
障がい者福祉が進んでいないミャンマーのモデル的な施設として、たくさんの子どもたちと、研修生を受け入れています。
児童養護施設出身者をサポート
不慮の事故で親を失ったり、育児放棄などの理由で児童養護施設に暮らす子どもたちは、18歳を迎えると、施設から出て行くことが求められます。
毎年、全国で約1600人の子どもたちが施設から自立していきます。
若く、やる気にあふれ、たくさんの夢や希望を持っていますが、経済的な理由で大学に進学することは難しく、多くはその夢をあきらめなければなりません。
こうした若者たちの存在に心を痛めていたMさんは、遺言書で、養護施設の子供たちのために、生きた証であるご遺産をすべて遺贈してくださいました。
日本財団では、Mさんのご意志を受け継ぎ、養護施設から大学へ進学を希望する若者のための給付型の奨学金「夢の奨学金」を設立しました。
厳しい環境に育ちながら、夢をあきらめない若者を応援しています。
その他にも
- 福祉車両を購入し、地域福祉に貢献
- 発達障害をもつ未就学児に療育プログラムを提供
などの事例があります
筆者の友人にも
「母校のクーラーは、亡くなった卒業生の遺産で購入されたものだった」というケースもありました
意外と身近なところで、亡くなった先人の想いが込められていたんですね
遺贈寄付の方法
日本財団が遺贈寄付をしたい人のサポートをしています
個別相談や遺言書作成などを、無料で行っています
日本財団は、公益財団法人の1つ。そのため「遺贈の〇%を日本財団が受け取る」といった、お金を取られる心配は全くありません。
遺贈寄付の流れ
遺贈寄付の流れをみてみましょう
- 寄付先・財産内容等を検討
- 遺言執行者を決める
- 寄付先と打ち合わせ
- 遺言書の作成
ここまでが生前に行うことです。
- 遺言の執行
- 財産の引き渡し
これで、寄付は完了です
あなたの残したものが、後世へと受け継がれていくことになります。
注意すること
- 申告期限
故人の遺産を寄付する場合、相続税が抑えられます。
しかし、相続税の申告期限は、相続開始後10ヶ月。
この期間を過ぎてしまうと税の優遇はうけられなくなります。
10ヶ月を過ぎても寄付はできますが、忘れないようにしておきましょう。
- トラブルがおきないように
遺言書がない場合、遺産を受けることができるのは、配偶者や子どもといった法定相続人のみになってしまいます。
身内以外の人、つまりNPO団体や学校に遺贈寄付をする場合は、遺言書が必須となります
このとき、トラブルが起きてしまわないよう、中立的な立場で遺産を分配してくれる専門家を依頼するようにしましょう
まとめ
日本財団によると、年間100件程度だった遺贈の相談は、16年度には年間1400件を超えているそう。
2016年3月末時点で18人が実際に遺贈することを決めたとのことです。
寄付元年ともいわれる東日本大震災で、困っている人たちのためにお金を使おうという意識が芽生え始めたことと、寄付ブームと終活ブームが合わさった結果だと、考察されています
最後の社会貢献に、生きた証として「寄付してみる」というのを選択肢にいれてみてはいかがでしょうか