待機児童、ワンオペ育児、教育費…
子育てをめぐる社会問題は、数えきれないほどあります。
しかし、子どもを授かるまで、つまり妊娠をするまでにも、実はある問題があったのです。
それは不妊にまつわる問題。
最近は「妊活」というワードも流行り、不妊治療をしている、という声を聞く機会も増えたのではないかと思います。
将来のことを考えるときに、頭の隅っこには入れておきたい「不妊治療」
今回は不妊をめぐるアレコレをお伝えします。
そもそも不妊って?
不妊とは、妊娠を望む男女が一定期間妊娠しないこと。
日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義しています。
原因は排卵がない、卵管が炎症を起こしている、精子の数が少ない、運動量が少ないなどさまざま。
日本で不妊症に悩むカップルは5.5組に1組というデータがあります。
不妊治療を経て産まれた赤ちゃんは51001人。新生児の19.7人に1人の割合です。
不妊に悩むのは珍しいことではありません。
しかし、デリケートな話なだけに、なかなか世間に知られないのが事実。
不妊治療に取り組むカップルは、いろんな課題に直面しています。
なぜ不妊に悩むカップルが増えたの?
2003年から2015年の13年間で、不妊治療を受ける人の人数は4倍に増加したとか。
なぜこんなに数が急増したのでしょうか。
そこには「女性の社会進出」が関係しています。
不妊は個々人が原因でおこるものではなく、社会が作り出した問題といっても過言ではありません。
いまや女性が管理職として活躍する企業も珍しくありません。
「仕事が忙しいから、子どもはもう少し落ち着いてから」としていくうちに年を重ね、いつのまにか子どもを産むことが難しい年齢になっているといいます。
また、仕事でのストレスによって、妊娠しにくい身体になってしまう、というケースもあります。
「結婚しても、すぐに子どもは作らない」という選択は夫婦の自由です。
「結婚よりも仕事を優先したい」という選択も、女性の自由です。
しかし、いざ子どもが欲しくなったときに子どもができない、という状況は、少子化をどんどん加速させていきます。
不妊治療ならではの悩みって?
費用がかかる
不妊治療にはお金がかかります。
治療の平均金額は約193万円。
体外受精や顕微授精などの高度な治療をすればするだけ、費用はかさみ、300万円以上かかったというカップルもいます。
それぞれの治療にいくらかかるのかを見てみましょう。
- タイミング法
排卵の時期を病院で診てもらい、指導を受けながら性交渉のタイミングを合わせる治療。
排卵日の周辺で数回の通院が必要となります。
1回あたり5,000~10,000円が相場。
排卵誘発剤を使用する場合は費用がさらに高くなりますが、タイミング法自体は不妊治療の中では一番安価です。
- 人工授精
医師が子宮内に精子を送り込む治療。
1回あたり10,000~30,000円が相場です。
保険適用外のため、自費診療となります。
- 体外受精
針で卵巣から卵子を取り出し、体外で受精させてから子宮内に受精卵をもどす治療。
採取した卵子と精子を受精させてから子宮内に戻します。
300,000~500,000円で、さらに凍結胚移植をする場合は150,000円が相場。
保険適用外のため、自費診療となります。
- 顕微授精
体外受精で、自然に精子と卵子が受精しない場合や、極端に精子の数が少ない場合は、卵子に直接精子を注入します。
顕微鏡下で行うため、顕微授精と呼ばれています。
1回あたりの相場は350,000~700,000円。
余った卵子を次の治療のために凍結保存することもでき、その場合は別途費用がかかります。
参考:不妊治療や体外受精の悩みに答えるwebマガジン「ウィルモ」 不妊治療にかかる金額っていくらぐらい?
ゴールが見えない
不妊治療の怖いところが、100%成功するとは言い切れないところ。
何百万かけても妊娠しなかった、ということも起こりうるのです。
「もう一回治療をすれば次こそは」と、治療のやめどきに悩む人も少なくありません。
そして何度も失敗してしまうと、自分が悪いのだろうか、パートナーが悪いのだろうか、と責めてしまうのが人間。
夫婦間の温度差や、治療をめぐってのトラブルで離婚をしてしまう夫婦もいます。
ストレスとのたたかい
年末年始は1年の中でも大きなイベントですよね。
地元に帰って古い友人に会ったり、美味しいごはんをおなか一杯食べたり…。
しかし、不妊治療当事者にとってはつらい時期であるといいます。
なぜなら親戚一同が集まり「孫の顔がみたい」とせがまれ、年賀状には歳の近い友人の子どもの写真があるから。
周囲は良かれと思ってしていることでも、当人はとても気にしてしまいます。
さらに最近話題になっているのが「二人目不妊」
周囲からは「一人っ子だとわがままな子になってしまう」という圧をかけられ2人目に挑むも、子育てをしながら治療をするのは大変なこと。
一緒に治療を乗り越えてきた仲間には「一人いるんだからいいでしょ」と愛想をつかされ、一人で思い悩む…という人もいます。
原因をみつけるのに時間がかかる
多くの場合、はじめ女性だけが病院に通います。
しかし、実は不妊の原因の約半数は男性というデータがあります。
仕事のストレスやライフスタイルの変化で、こどもができにくい身体になってしまうのは女性だけではありません。
難しいのが、はじめに不妊治療をするのは多くが女性のみであること。
女性がずっと治療をしていも効果があらわれず、「もしかして?」と男性が病院にいくと、実は男性に原因があったと判明するパターンも少なくありません。
そうなると、女性だけが治療をしていた期間、費用は水の泡になってしまうのです。
仕事との両立が難しい
不妊治療で必ず話題にあがるのが、職場での問題。
不妊治療をした人のうち、両立が難しくなって退職をした人が5人に1人。
「〇日後にきてください、と診察日が突然決まってもお客さんとのアポはずらせない」
という、治療と仕事の両立ができないことに対する悩みや、
「頻繁に通院しなくてはいけないので、『元気そうなのに』と言われるけど、プライベートなことなので治療していることを上司や同僚に打ち明けられない。」
という、デリケートな問題だからこその悩みも。
治療のことを話しても「一回で成功させろ」「まだ子どもはいらないでしょう」と言われてしまうケースもあり、これを「プレ・マタニティハラスメント」といいます。
ただでさえ治療でお金が必要なのに、仕事を辞めざるを得ない、というジレンマがそこにはあるのです。
そして、退職した人の多くは働き盛りの30代であることがわかっています。
社員が退職してしまうことは、企業にとっても大きな損失。
治療と仕事を両立できるよう、企業も制度を整えていかなければなりません。
まとめ
いかがでしたでしょうか
不妊は家庭内の問題ではありません。
社会全体が一丸となって取り組むべき課題であるのです。
どんなことで悩んでいるのか、知ること、話しをきくだけでも、悩んでいる人にとっては心の支えとなります。
まずはあなたのできることから、はじめてみませんか?
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「過去の自分のようにつらい思いをしている人のために」と、不妊の経験をいかしてカウンセラーとして活躍する「ピア・カウンセラー」がいます。
大切なのはゴールは妊娠だけでないことと、つらい気持ちを共有すること。
不妊当事者にとって生きやすい社会になるためには何が必要なのか、お話いただきました。
阪神淡路大震災は「ボランティア元年」、東日本大震災は「寄付元年」と言われています。
日本ファンドレイジング協会の「寄付白書2017」によると、日本における個人寄付の総額は2010年で4874億円。
震災のあった2011年には10182億円と2倍以上に跳ね上がりました。
この膨大な寄付金、一体どんなことにつかわれたのでしょうか?
美味しいものを食べたり、飲み物を買ったり、新しい服を買ったり。
普段の生活を送るだけで社会貢献になる、お互いハッピーな寄付があるんです。
ここでは、買い物を通じて活動を応援する方法をご紹介いたします。
「友達に遊びに誘われるのがイヤだ。うちは貧乏で、遊びに行くお金なんてないから」
こう話しているのは、わずか10歳ほどの子どもたち。
世界には、満足に教育を受けることができない子どもがいます。
なにか社会貢献したい!寄付したい!とは言っても、正直自分の生活でいっぱいいっぱい…
でもそんなあなたに朗報!
実は捨ててしまうものや、意外なもので寄付もできちゃうんです。