2019年5月に株式会社コネクト&フロウからリリースされた「Social留学」
語学留学と海外インターンやボランティアを組み合わせられるサービスです。
収益を提携する各組織に寄付することを前提に設計されたソーシャルグッドな仕組みでもあります。
代表の野中さんにサービスを作ったきっかけや想いについて、ざっくばらんにお話いただきます。
海外での学びに、より多くの選択肢と利益が循環する仕組みを
————まずは、Social留学について教えてください。
野中 Social留学は世界各地で活動している社会起業やNGO、NPOが提供している海外インターンやボランティア、スタディツアーなどの取り組みと語学留学を組み合わせることで、幅広い学びの機会を創出する試みです。
また、語学留学を組み合わせる場合には留学費用の一部が提携している組織に寄付され、個人の海外挑戦と社会貢献が持続性をもって循環するように作りました。
————どのような仕組み、運営の仕方なんですか?
野中 Social留学のサイトは、各組織のあらゆる情報が集積するプラットフォームになっており、ユーザーはその中から関心のある情報を見つけ、組織の活動内容や募集を知ったり、実際に活動に参加したりすることができます。
お問い合わせの際にオンラインや面談でのやり取りを通して、一人ひとりの関心や考えに合った活動のご紹介や語学留学を組み合わせるプランなどをご提案しています。
カウンセラーには実際に現地で組織を運営している人や国際協力に詳しいアドバイザー、語学留学カウンセラーなどが揃っていて、適切な人材がヒヤリングやアドバイス、プランニングを担当します。
最終的にユーザーがSocial留学を使って海外インターンやボランティアなどに実際に行くことを決め、そこに語学留学を組み合わせた場合には留学で発生する売り上げの一部が提携している各組織に寄付されるという仕組みです。
また、募集や活動報告など、Social留学のサイトのコンテンツになり得るものを任意で各組織から随時募集していて、貢献度をポイント制で見える化し、そのポイントを寄付金額に換算して留学の売り上げから自動的に寄付される金額に加えて還元する仕組みも設けています。
留学が寄付になる仕組みの図
二か国間をまたいで働いて感じた課題
————このサービスを思いついたきっかけを教えてください。
野中 フィリピンの情報メディアや留学エージェントとして日本とフィリピンを行き来し、たくさんの人と出会う中でみえた課題が二つありました。
一つ目は、フィリピン留学業界の現状にあります。
フィリピンの留学産業は年間数万人の留学生が訪れる一大産業です。
しかし、学校経営者はフィリピン人ではなく日本人・韓国人が90%を占めており、生まれた利益が留学ビジネスを行わせてもらっている現地に十分に還元されていません。
もちろん雇用を生んでいる側面はありますが、留学事業に携わっている我々はもっと現地に対しての責任があると思いました。
二つ目は、現地で活動する各組織の発信の現状です。
各地で活動している組織の生きた情報が集積していて、見やすくまとまっているサイトが少ないんです。
各組織や取り組みは魅力的で素晴らしいのですが、それをきちんと社会に対して発信できてない。
もちろん、現場の方々は現場が第一で、全ての時間、ときには命まで懸けて活動しているので、仕方のないことだと思います。
しかし、この状況は志や関心のある人たちが正しい情報を受け取れなかったり、組織側もいい人材や寄付を集めにくい状態にあったりと、双方にとって機会損失が大きいと感じました。
この二つの課題が、Social留学を作ったきっかけです。
————フィリピンと日本を行き来して働く中で見えてきた課題がきっかけだったんですね。
ソーシャル留学
走り出してみえてきたこと
————2019年5月に実際に動き出してみて、感触はどうですか?
野中 初月から問い合わせを数多くいただいており、順調な滑り出しです。
Social留学には大きく分けて入り口が二つあります。
語学留学への興味を入り口に来てくれる人たちと、国際協力や海外インターンへの興味から来てくれる人たち。
これからSocial留学を届けていきたいのは、国際協力や海外インターンに興味がある人たちです。
なぜなら、当然ではありますが海外で活動する際には英語が話せる方が有利です。
また、今まで個人で海外インターンや国際協力に携わろうとするとインターン斡旋会社のや旅行会社を経由して参加するために、斡旋料やツアー料に加え食費と宿泊費が必要でトータルの費用がかさみました。
しかし、このサービスはポータルサイトとして情報を提供し、インターンやボランティアなど掲載している募集への参加には一切手数料をいただきません。
加えて、語学留学とセットで参加する場合は語学学校で1日3食の食事と住居が用意されているので、追加の滞在費は一切かかりません。
このような理由から既存の他のサービスをを使う際に障壁となるユーザーの負担を大きく軽減できるので、海外挑戦の大きな手助けになると考えています。
————なるほど。留学事業での収益があるので、他のサービスだと必要になるインターンやボランティアの手配、紹介料がかからない。
そして留学の料金には食・住がすでに含まれているので、学校の寮やホテルにいる期間はその費用も別途掛かかることはないということですね。
野中 また、まだ加盟団体との調整に時間をかけていて広報・広告に時間を割けていないので、現状は若年層のSNS経由での問い合わせが多いです。
今後の広報戦略がうまくいけば幅広い年代の方にご利用いただけると考えていて、そうなればSocial留学は、シニア層にもささると思います。
なぜなら、昨今の日本はお年を召されても元気な方が多いですし、社会貢献をしたいという声はよく聞きます。
英語を楽しめるのであれば、語学学校は食事と住居が確保されていてセキュリティーもしっかりしていて安全なので、安心してフィリピンに来ていただき、寄付だけではなく実際に現場に参加できる新しい支援のカタチになり得るのではないかと思います。
ソーシャル留学のもう一つの存在意義
野中 また「なぜ、これをやっているのか」ということを、協力してくれている組織の方々にもっと上手に伝えていきたいと思います。
情報源であり受け入れ先である各組織の方々に腑に落ちてじぶんごとにしてもらえると、このサービスがさらにいいプラットフォームになると思っています。
そうやってみんなでこのプラットフォームを育てて、ここがハブのような存在になれば、自然と色々な繋がりが生まれてくるからです。
————ハブというと?
野中 例えば、インターンで半年組織に所属する学生なんかが結構いるんですけど、彼らはその組織のコミュニティしか知らないこととかってよくあるんです。
同じ時期に志を持ってきている仲間と情報共有だとか、コラボレーションができるコミュニティがあればその出会いは財産にもなるし、より高め合える。
そこの役割をみんなを巻き込んでこのプラットフォームを育てていくことによって、担うことができるのではないかというのが冒頭でお話しした課題の解決策としてのソーシャル留学という仕組みと、また別の意味での存在意義になる気がします。
裏テーマみたいな感じですね。
————なるほど。冒頭でいっていた課題解決と並行して、各人や各組織を横ぐしで繋ぐコミュニティの役割も担っているんですね。
ソーシャル留学への想い
————最後に今後のSocial留学の展望を教えてください
野中 私の場合は、原体験としてフィリピンでの経験がきっかけになりましたが、フィリピンに限定せず、Social留学をいろんな国でやれたら良いなと考えています。
語学学校やNGOや社会起業は世界中にあるので、まずはフィリピンできっちりと雛形を作って、他国での展開やフィリピンでのSocial留学の後に二か国、三ヶ国をまたいでのプランもすでに進めています。
できる限り国境にも縛られずに、原点である幅広い学びの機会の創出と社会への還元いうところを愚直にやっていきたいです。
学びの瞬間はどんなところにでもどんな切り口にでもあると思っているんです。
後から振り返って良いように解釈することはできますが、実際はタイミングや縁としかいいようのないことの方が多いじゃないですか。
僕自身のフィリピンとの出逢いも単なる偶然で、大学の先輩がフィリピンの関連の会社に携わっていて誘われたのがきっかけ。
————フィリピンに対して初めからこだわりがあったわけじゃなかったんですね
野中 はい、そうなんです。
もともと想いやビジネス的な狙いがあってフィリピンに来たわけじゃない。
フィリピンで仕事をした後で大学に復学し就活を経験してみて、大きな会社にはめちゃくちゃ優秀な人がたくさんいて、ある意味で適材適所を感じたというか、すごく優秀なこの人たちにもあまりみえていないものもあって、僕の中には彼らにはない視点や課題感がありました。
だから内定を辞退して新卒で起業したんです。
自分にとってはそのきっかけが、たまたまフィリピンだったということです。
それが想いに変わっていったという感じですね。
————今の利用者は比較的に学生が多いということで、野中さんがフィリピンに渡り自分なりの課題に出会ったぐらいの時期の年齢の人たちと関わることが多いと思います、そこに対して何か思うことはありますか?
野中 めちゃくちゃありますね!色々と考える時期じゃないですか。
人生に正解はないのに、どうしてもみんな正解を探してしまいがちだと思うんですね。
でもそこで、納得感がないまま決まった分野を学ぶことや、何がなんでもこれをやると決めつけてしまうのではなくて、とりあえず海外に出てみて今まで見えてなかったものや意識してなかったものが不意に現れて、自分の価値観にズレが生じるというか、簡単にいうと世界が広がるみたいな体験って大事だと思うんですよ。
そういう瞬間が学生の時期にあると、ずっと身近な範囲で培ってきた一つの価値観で就活や仕事をするより、そこときの心の揺れや経験の幅が、意外に後の人生の中でやりたいことに変わったり救いになったりするのかなと思っています。
そういうチャンスとしてSocial留学を検討してもらえたらいいですね。