寄付は社会をどう変える?今井紀明氏と寄付の面白さを語る

寄付は社会をどう変える?今井紀明氏と寄付の面白さを語る

NPOをはじめとする非営利法人が活動をする上で、欠かせない『寄付』。

クラウドファンディングはもちろん、新しい寄付集めプラットフォームも次々と生まれ、日本の寄付はいま、過渡期を迎えています。
寄付白書2017(発行:日本ファンドレイジング協会)によると、日本の個人寄付推計総額は、7,756億円。
さらに日本人の45%が、現金での寄付をしたことがあるそうです。

しかし、そもそも寄付金とはどんなものなのでしょうか。どんな人が関わっているのでしょうか。
身近なようで、実は謎にあふれている寄付。

今回は「寄付はこれからの社会をどう変えるのか」をテーマにお話しいただきます。

アイキャッチ-寄付対談

 


≪プロフィール≫

今井紀明氏(写真右)
認定NPO法人D×P(ディーピー)理事長。
1985年札幌生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)卒。
高校生のとき、イラクの子どもたちのために医療支援NGOを設立。その活動のために、当時、紛争地域だったイラクへ渡航。その際、現地の武装勢力に人質として拘束され、帰国後「自己責任」の言葉のもと、日本社会から大きなバッシングを受ける。
結果対人恐怖症になるも、大学進学後、友人らに支えられ復帰。偶然、通信制高校の先生と出会い通信制高校の生徒が抱える課題を知る。。
親や先生から否定された経験を持つ生徒たちと自身のバッシングされた経験が重なり、大阪の専門商社勤務を経て、2012年にNPO法人D×Pを設立。「ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会」を目指して、通信制や定時制高校などに所属する10代で生きづらさを抱える若者支援のコミュニティーをオフラインとオンラインで作っている。NPOの未来を考えながら、資金調達や事業作りを実践的に学んでいくオンラインサロン「未来ラボ」を運営。
また、NPO支援の会社として株式会社SOLIOを2018年11月に設立し、様々な分野のNPO支援を展開している。

聞き手:谷田脩一郎(写真左)
株式会社ジャックアンドビーンズ Socia Div 事業責任者/公益財団法人民際センター理事
1986年石川県生まれ。金沢工業大学卒業。
インターネット広告代理店大手セプテーニの新規事業、 日本最大級のソーシャルグッドプラットフォーム「gooddo」に参画、プランナーを担当。
株式会社ジャックアンドビーンズに参画し、マーケティングプランナーDivの責任者を経て、2017年10月より非営利領域に特化したチームを立上げ、現職。

NPO法人D×P(ディーピー)

可能性を秘めた若者たち

ーーーーーーまずは今井さんが代表をされているNPO法人D×Pについて教えてください。

NPO法人D×Pでは、通信制高校や定時制高校に通う生徒のサポートしています。
自分の「これから」に希望が持てないまま生きている高校生がたくさんいます。
そんな生きづらさを抱えている10代の若者を支援しています。

でも一方で、僕らは彼らはたくさんの可能性も秘めていると考えています。

通信制高校に通う子や、不登校状態の子って、独立意識が強いと感じることがあります。
経済的に厳しかったり、虐待を受けたりしている子もいますが、その分自立したいという気持ちが強いんです。

起業・フリーランス・ベンチャー企業に関心のある子は多いですね。
自分でゲームアプリを作ってしまう子もいますし、研究熱心で大学に飛び級で受かってしまう、なんて子もいます。
本当にいろんな子がいるんです。

そんな子のために、D×Pでは学内でつながる場をつくったり、シェアハウスを作ったり、高校生のコワーキングスペースを作ったり。
学校卒業後のネットワークも作れたらと思っています。

ーーーーーーなるほど。なかなかユニークな取り組みをされているんですね。

寄付収入のメリットは?

ーーーーーー今井さんが代表をされているNPO法人D×Pは、どうやって運営しているんでしょうか?

寄付を中心に運営しています。
現時点で(2018年12月時点)、団体の収入のうち8~9割は寄付です。

当初は団体の収入のうち、およそ半分が事業収入でしたが、2015年に団体の経営を事業型から寄付型に切り替えました。
2018年は、年間7,500万円の寄付を集めることを目標にしています。

ーーーーーー運営を事業型から寄付型に切り替えて、団体はどう変わりましたか?

ものすごく変わりましたね。
生徒と同じ目線になることができるようになりました。

生徒がいま必要としていることを考えることができるんです。

例えば、よくNPOは行政からの委託事業をうけていますよね。
行政は生徒が進学・就職することを目指します。
けれど多様化が進む今の時代、生き方は進学・就職だけではありません

事業型だと、お金の使い道が自由でなくなるんです。
事業型の頃は企業や大学・高校側の目線で考えてしまっていました。

ーーーーーー事業収入ではなく寄付だからこそ、D×P独自のユニークな活動を作ることができるんですね。とは言え、事業型から寄付型に切り替えるのに躊躇はしませんでしたか?

大口の寄付者さんやサポーターさんが増えてきたことが、寄付型に切り替える背中を押してくれました。
「寄付型に切り替えても大丈夫だ」って、思えたんです。

いまでは生徒ひとりひとりに柔軟に対応できることが、D×Pの強みです。
生徒の目線になるからこそ、自分たちがつくっていきたい社会を、目指すことができる
全ての子どもたちが、自分の未来に希望を持てる社会を作っていけたら、と考えています。

僕たちD×Pがフレキシブルに動けるようになったのは、寄付のおかげです。

どうやって子ども若者支援に興味を持ってもらうか

D×Pの寄付者はどんな人?

ーーーーーーD×Pの寄付者は、どんな人が多いですか?

D×PはNPOの中でも特殊なのではと感じます。

一般的に、寄付をする人は女性が多いとされています。
しかし、D×Pの寄付者は男性のほうが多いんです。

比率でいうと、6:4か7:3くらいで男性のほうが多い。
多分俺が女性に嫌われてるんだろうね。
そう考えるとちょっとショックだなぁ。

年代も30~40代の方が多いです。
これも、一般的な寄付市場と比較すると特殊だと思います。

ーーーーーー寄付者は何人ほどいるのでしょうか?

毎月寄付してくれるマンスリーサポーターは400人ほどです。
D×Pは継続寄付者よりも、単発寄付者の方が多いんです。

クラウドファンディングでの寄付者が多いことはありがたいことですね。
けれど単発寄付だと寄付額が安定しているとは言い切れないので、これは団体の課題でもあります。

ーーーーーーD×Pのクラウドファンディングはユニークですよね。砂漠をマラソンしたり、事務所移転のためにクラウドファンディングをしたり。

D×P-クラウドファンディング01-寄付対談

参考:事務所増設で高校生が集まる拠点を実現したい!若者がつながるコミュニティを創る

ーーーーーーどんなときに「クラウドファンディングをしよう!」となるんでしょうか?

これは生徒にとって必要なものだと思ったときにクラウドファンディングをします。

例えば、高校生にパソコンを無償提供する「TECH募金プロジェクト」。
これは生徒から「プログラミングを勉強したいけどパソコンがないし」と声が上がったんです。
それを聞いて「たしかにプログラミングを勉強する機会があっても、パソコン本体がなければ自宅でいろんな試作ができない。一人ひとりにパソコンが必要だな」と思ったんです。
生徒にとってパソコンは必要なものだと思ったのでクラウドファンディングを始めました。

D×P-クラウドファンディング02-寄付対談参考:PCとプログラミングの力で高校生に未来を開拓する武器を。TECH募金プロジェクト

無関心層へのアプローチ

ーーーーーーこれまでのクラウドファンディングは、今井さん自身が何かチャレンジするものだったり、物が直接寄付されるものだったり、さまざまですよね。いろんな方法を試している理由はなんですか?

これまで関わりのなかった人に関心を持ってもらうためです。

D×Pが取り組んでいる若者をめぐる社会課題って、関心を持っている人が少ないんです。
どうやって若者支援に関心を持ってもらうかを考えたとき、自分たちがやっていること以外のコンテンツが必要だと考えました。

いくつかやったクラウドファンディングのなかでも、アタカマ砂漠マラソンチャレンジはかなり奇抜なものだったと思います。

D×P-クラウドファンディング03-寄付対談参考:高校生のために標高3000mを250キロ走る! 天空のアタカマ砂漠マラソンに挑戦

でもアタカマ砂漠マラソンチャレンジは実際に効果がありました。
驚くことに、寄付してくれた人のうち、40~50%は新しい人だったんですよ。

ーーーーーー40~50%が新しい人とは、すごいですね。

これまで関わりのなかった人に寄付者になってもらうことは、とても大事なことだと思っています。

D×Pは関西が活動のメインですが、東京・札幌でも活動をしています。
各地でイベントを開催していますが、地域性の違いを実感しますね。
東京のイベントは寄付が集まりやすいんですが、活動の拠点でもある大阪は寄付が集まりにくいんです。

だからこそ「どうやって新しい寄付者を集めるか?どうやったら関心のない人にアプローチできるか?」を常に考えなければいけません。

ーーーーーーたしかに、新たな層にリーチするには、文脈を変えたほうがいいこともありますよね。僕は「寄付する人はどうして寄付するんだろう?」とよく考えています。同じようなミッション・ビジョンを抱えた団体であっても、伝え方によって寄付の集まり方が違います。

たしかに、寄付が集まるかどうかは伝え方に大きく左右されますね。

ーーーーーー一般企業のマーケティングでは「どうやって商品をアピールして、どうやって購入させるか」と考えます。けれど寄付はまた違った戦法を取らなきゃいけないんですよね。

寄付する人も、どんな団体なのかは一回接してみないとわからない。
どんな課題があるのかも、なにかしらの形で接してみないとわかりません。

D×Pが取り組んでいる「子ども・若者支援」は、よっぽど興味のある人でないと寄付しません。
けれど、アタカマ砂漠マラソンチャレンジでは「現状の社会課題は知らないけれど、今井のアタカマ砂漠マラソンへの挑戦は応援したい」という方がいらっしゃいました。
「なんか面白そうなことやってる!寄付してみよう!」と。

クラウドファンディングを知って初めて社会課題を知る、という順序だったんです。

D×Pのミッションに共感して寄付してくれる人、マラソンチャレンジをきっかけに寄付してくれる人。
どちらも同じ「寄付者」ですが、全く違いますね。

ーーーーーー同じ寄付でも、文脈が全く違うんですね。

寄付のおもしろさ

人はなぜ寄付をするのか

ーーーーーー今井さんが寄付をおもしろいと思ったきっかけはなんですか?

はじめに抱いた疑問は「寄付金ってどんなお金なんだろう」。
D×Pに寄付していただいて、はじめは「いただいてありがたいもの」と思っていました。
けれど、D×Pのサポーターから「寄付させてくれてありがとう」と感謝される機会が多くなったんです。
それをきっかけに「これは一体どういうお金なんだろう?」と疑問を持ち始めました。

そして次に考えたのが、「どうやったらもっと寄付が集まるのか
D×Pは、寄付があつまってはじめて生徒の支援ができます。
企業や行政とは違ったことができるのは、寄付があるからこそです。

どんな要素があればもっと関心を持ってもらえるのか、そしてそもそも寄付とはなんなのかを考えるようになりました。

寄付の面白いところは、納税とは違って、自分の意志で社会をつくろうとしているところ。
社会をつくる側にまわることができるところですね。

ーーーーーーたしかに、お金の流れに意思を感じます。物を購入するのとは別の文脈なんでしょうね。

日本の寄付金額は、東日本大震災をきっかけに伸びてきていますね。

日本の個人寄付額は年間約7~8000億円。これだけのお金が動いているのに、その動いている理由がちゃんとわかっていないんです。
どうして人は寄付するのかは、謎が多いですよね。

以前Twitterの僕のフォロワーに、NPOに寄付したことがあるか、アンケートを取ったんです。
117人が回答してくれたんですが、僕のフォロワーのうち52%がNPOに寄付したことないんですよ。

ーーーー今井さんのフォロワーってことは、少なからずNPOや社会課題に興味のある人ですよね。

そう。
にも関わらず、52%がNPOに寄付したことない。
「意外に寄付していない人って多いんだ!」って驚きました。

また別のアンケートで、寄付をしない理由を聞きました。
理由としては「どこに寄付したらいいかわからない」が32%、「何に使われているのか不安、NPOに信頼性ない」が29%、「そもそも関心がない」が23%、「しようと思ったがカード決済など決済が面倒」が16%でした。

僕のフォロワーでこの数字ですから、世間一般でみたら寄付している人はもっと少なくなると思います。
NPOは謎の産物だって、改めて思い知らされました。

ーーーーーーきふるでは、どうして寄付や社会貢献をするのか、インタビューをしています。寄付者インタビューでは、「応援消費」だったり「恩返し」だったり、いろんな寄付の理由が明らかになりました。

へぇ、これはおもしろい企画ですね。
寄付についてここまでインタビューしているメディアって、他にはないんじゃないんですか?
これを見ると、D×Pへの寄付者は「応援消費」のパターンが多いのかもしれないですね。

ーーーーーーインタビューでは、「かわいそうだから寄付しよう」という文脈はほとんど見られませんでした。

たしかに、「かわいそうだから寄付しよう」というのは、一部に限られますね。
年齢が上の方だったり、海外協力系といった活動分野に多い印象がある。

ーーーーーーみんなそれぞれの理由があって寄付をしているって面白いですね。にも関わらず、世間は寄付を高尚なものと思ってしまっている。

そうですね。
もっと寄付を気楽に、カジュアルに考えてもらいたいです。

ーーーーーーだからクラウドファンディングでは、いろんな企画にチャレンジされているんですね。

日本の寄付のこれから

ーーーーーーもしも日本の寄付市場がもっともっと拡大したら。例えばいまの10倍寄付がある世界になったら、日本はどうなると思いますか?

いまの日本の寄付額は7000億だとして、7兆円の世界ですね。
これはかなり変わるでしょうね。

ーーーーーーいま日本の国家予算が、社会保障で32兆円、教育費(文教及び科学振興)で5.4兆円です。7兆円となると、かなりの規模です。

人々の意識が大きく変化すると思います。
もし7兆円も寄付が動く社会だとしたら「自分たちで社会をつくるんだ」という意思が強くあらわれるようになるでしょうね。
国や国家が作ることができないものを、非営利法人が作ることができるようになります。

社会問題は、次々と新しいものが生まれ続けます。
国はアップデートのスピードが遅く、社会の変化に追いついていません。
けれどもし7兆円の寄付額があって、非営利法人がパワーを持つようになれば、課題に素早く対処できるようになる

選挙の投票率も下がっていて、若者系の政策はなかなか通りません。
けれど寄付は自由度が高いので、自分たちが課題に感じていることに対してアプローチできるようになる

もしも寄付市場がいまの10倍あれば、企業や行政とはまた違った社会ができるんじゃないかな。

ーーーーーー日本の行政が持っている考え方は、王道が決まっています。教育で言うと「ニートにならないで働いてね」と。そこから抜け落ちた人のフォローは後回しになってしまう。それに対してNPOは多様性を認めていて「抜けてしまうことだって王道だ」としている。こういう考え方は、ものすごく生きやすいですよね。

これからどう展開していくか

ーーーーーー最後にこれからの3年でやりたいことをお聞かせください。

シンプルに話しましょう。
D×Pの事業では、「つながる場」「いきるシゴト」「いきる暮らし」の3つの柱を強化させていくことを進めます。
いまは大阪を中心として活動していますが、東京の活動も大阪並に充実させていきたいです。

そうなると寄付を増やさないといけません。
2019年の寄付目標額は年間8000万円なのですが、3年後には1億円を目指したいですね。

ーーーーーーそうなると、いまよりもたくさんの人にD×Pを知ってもらう必要がありますね。

海外に事業展開したいとも思っています。
海外ともうまく繋がっていかないと、日本のNPOは成長していかないだろうなと。
いま僕は、どうやってタイや香港などの財団から寄付を集められるかを考えています。

ーーーーーーODA(政府開発援助)の市民版と言いますか。グローバルで支援をし合うことも必要ですよね。

たしかに、世界レベルでのお金の循環が必要ですね。
僕が仮想通貨に興味を持ったのも、それがきっかけなんです。

フランスのユニセフが仮想通貨による寄付の受付を始めました。
いずれ日本も、仮想通貨で寄付できるようになるかもしれない。
寄付の可能性はまだまだたくさんあります。

ーーーーーー僕たちはいま、NPO専用のCMSを開発しています。価値のある活動をしている非営利団体はたくさんあるのに、その情報が支援を必要としていない人に届いていないんです。400団体以上の広告運用をしていますが、サイトの質が団体への信用にも関わってくることがわかりました。

たしかに。
スマートフォン専用サイトがなくて、いちいち拡大しなきゃいけないってだけで、サイトをみる気分が下がりますよね。
そうなると、集まる寄付も集まらない。

ーーーーーーだから信頼してもらえるように、最低限の情報が備わったWEBサイトを簡単に作ることができるようなCMSを作っています。

なるほどそれは必要ですね。
もしそれができれば、日本の寄付市場はまた大きく成長するかもしれません。

 

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非営利団体の広報活動を加速!WEBの悩みを改善する新サービス

“情報を伝えたい団体”と“情報を必要とする人”をつなぐ

「価値ある活動をしているのに、社会に伝わらない」
ホームページをつくれるサービスはたくさんありますが、数多く存在する非営利団体にとって、この問題の解決には至っていません。

「使い方がわからない」
「難しくてなかなか触れられない」
せっかくホームページを導入しても、うまく活用できない人も多くいらっしゃいます。

約500団体もの非営利法人のWebマーケティングのサポートしてきたからこそ、こうした状況を打破し、必要な人に活動が届く土壌をつくりたい。
“使いにくくて困るWebサービス”ではなく、“自分たちの手にフィットするサービス”を提供したい。

そこで私たちはWeb上の悩みを抱える全ての方々に対して、「プロに気軽に会いにいける、直接相談できる」しくみをつくり、非営利団体の方の「伝える」をサポートします。

 

 

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