歌舞伎町でクラブ店長として見た社会を変えるために|継続支援プラットフォーム「ビスケット」代表清水舞子氏

歌舞伎町でクラブ店長として見た社会を変えるために|継続支援プラットフォーム「ビスケット」代表清水舞子氏

ソーシャルグッドを行う人を継続的に支えるためのプラットフォーム「ビスケット」。
「応援する人」と「される人」を繋ぎ、日々の活動に対する継続的な支援を提供するサービスです。

ビスケット誕生のキッカケは、代表の清水さんが歌舞伎町でのクラブ店長として働いたときに感じたあること。

ユニークな経歴を持つ株式会社祭代表の清水舞子さんに、ビスケットをつくるまでのエピソードや、込めた想いなどざっくばらんにお話いただきます。

継続支援プラットフォーム「ビスケット」

 

えってぃー
えってぃー

はじめに「ビスケット」について教えてください。

インタビュー-ビスケット02

「ビスケット」サービス説明資料より。サービスの使用手順

清水さん(以下、清水):ビスケットは、「価値のある活動」をしている誰かを継続的に応援でき、自分も仲間になれるサービスです。

これまでの応援者集めの方法としてメジャーなものに、クラウドファンディングがあります。
クラウドファンディングの多くは活動自体ではなくプロジェクト単位での支援です。
でも、活動ってずっと続いているものですよね。
その活動自体を応援し続けられるように、単発の支援ではなく継続した支援ができる。また、一方的な支援ではなく、支援した人も仲間のひとりとして活動に参加できる。
これがビスケットの特徴です。

そしてビスケットはクラウドファンディングのように、特別にグッズや物品などのお返しを用意することもありません。
応援してくれた人には、優先的に活動報告を送ることができます。
イメージとしては、有料メルマガのあるファンクラブが近いですね。
あくまで本業に集中しながら、応援や参加する人との関係性を築いていく……今後もそんな機能を実装予定です。

「ビスケット」の名前には「ビスケットを友達に渡すくらいの感覚で応援や参加を」という想いを込めています。
お菓子を友達にあげるときって、見返りを求めないですよね。
そういう直接的かつ短期間での、対価を求めないお金の流れがあるのではないかと考えています。

自分ひとりで食べるのではなく、誰かと共有する。
ポケットをたたくと、ビスケットがふたつ♪と歌にあるように、信用し手を取り合う輪が広がっていけばいいなと思っています。

 

えってぃー
えってぃー

自分1人で食べるよりも、誰かとシェアして食べたほうが楽しいってことありますよね。

清水:ビスケットのユーザーは、NPOやソーシャルセクターで活躍する方、個人で活動をしている方、奨学金の欲しい中高生など、幅広い方をイメージしています。

その人を応援したい!と思ったら、応援する仲間に加わることができる。メンバーの1人になれる。
実は、この仕組みを作ろうと思ったのは、わたしがたくさんの人達に支えられたという経験から生まれました。

大学に通いながらクラブ店長に

新宿で泣いていたら声をかけられた

清水:わたしは美術大学で現代アートを勉強していました。
アートは「世の中これでいいのか?」と問いを投げかけることはできるんです。
でも誰かの悲しみが癒されるってことはありません。具体的な解決方法を示すことはできないんですよ。
だったらビジネスで、持続可能性の高い課題解決策を示すことができるんじゃないかと思ったんです。

ビジネスを勉強しようと、美術大学を中退して明治大学商学部に編入しました。
入学資金として100万円程貯めていたんですが、ある人に貸したらそのお金が返ってこなかったんです。
そんな大金貸すなよって話ですけどね(笑)

「学費の納入期限に間に合わない!どうしよう!試験勉強しながら、頑張って貯めたのにこんなことで編入できないなんて!」って、新宿で1人泣いていたんです。
そしたら、新宿という場所ですからね「なんで泣いているの?お金ないんだったらクラブで働かない?」って声をかけられたんです。
それをきっかけに、新宿のクラブで働き始めました。

そのクラブ頑張って働いて学費分は稼いだものの、どうしても10万円足りなかったんです。
「仕事頑張ってくれているし、これを使えよ」と10万を受け取るかわりにクラブの店長になることになりました。
こうして、大学生とクラブ店長の二足のわらじ生活が始まります。

場所も年齢もほぼ同じなのに、会話が全然ちがう

清水:昼間は大学の授業をうけて、夜はクラブで店長として女の子たちの面倒をみていました。
この間に、本当にいろんな経験をしてきました。

衝撃だったのが、大学にいる友人たちとクラブで働いている女の子たちの世界が全く違うこと。
住んでいる場所も、年齢もほぼ同じなんですが、境遇や会話が全く違うんです。
大学の友人たちは、就活、ビジネスコンテスト、海外留学などの話をしていました。
一方でクラブの女の子たちは中絶、自殺、DV……といった話をしているんです。
どちらの世界にもそれぞれの喜びも苦しみもあるんですが、やはり「手を伸ばした時に届く機会の数」は圧倒的に違いました。

とは言え嘆いていても仕方がないので、中絶手術に立ち会ったり、DV受けている女の子を助けにいったり。
クラブで働く女の子たちのために、できることはやってきました。

でも、1人の力では限界があると気づいてしまったんです。
「もしわたしが100人になったとしても、根本的な課題の解決はできないな」と。

ちょうど悩んでいたころ、大学の友人たちがインターネットのベンチャー企業を立ち上げたのをみて、インターネットの可能性を感じました。
これだったらわたしが100人いなくてもいい。
自分の手の届く範囲のことは限界があるけれど、インターネットであれば手を広げることができる。
なにかを望んでいる人がいたとき、誰かが手を差し伸べることができる。

社会をよくするために頑張っている人を助けるサービスを作れないか。
そういう想いで、ビスケットを作ったんです。

 

えってぃー
えってぃー

大学とクラブ店長の両方の世界にいたからこそ見えた世界ですね。

インタビュー-ビスケット03

「ビスケット」サービス説明資料より。
“ひとりでゴールする冒険なんてない”がキャッチコピー

バツ印だらけの求人雑誌をみつけて

清水:わたしなりに解決しようと奮闘はしましたが、どうしようもできないこともありました。

クラブの店長をやっていたとき、よくアドバイスをもらっていた人がいるんです。
人望にあふれていてみんなから頼りにされて、頭もよくて、とてもお世話になりました。
実は彼が、編入学の際に10万を提供してくれた人です。
その時も、申し訳なくて受け取れないと伝えたのですが、彼は「これであなたに店長として働いてもらう権利を買っているようなものだから、自分は買い物をしただけだから気にするな」と言ってくれました。
そのお陰でわたしは無事大学に入学することができました。

ただ、児童養護施設で育った彼には、履歴書に書ける学歴も職歴もありませんでした。
中学も卒業していなかったんじゃないでしょうか。
「僕は自分の人生に満足している」とよく話していたんですが、ある日彼のカバンから、バツ印だらけの求人雑誌をみつけたんです。

「人生に満足している」といいつつ、今の世界とは違う仕事に就きたかったのだと思います。
しかしそれは当時の彼には困難なようでした。
本人の責任とは言え、職歴も学歴も書けないまま30も半ばを迎えてしまっては、雇用先なんてなかなか見つからないですよね。

そのことを知ってしまったときは、衝撃でした。
「こうなったのは本当に彼だけの責任なんだろうか。それだけではないのではないか。しかし、社会のことも彼のことも私の力ではどうすることも出来ない」とショックを受けました。

就職したいとか進学したいとか、なにかをしたい望んだときにはもう取り返しがつかない。
努力をするにも評価をされるステージに登るにも信用やお金が必要で、それが本人の頑張りではない生まれもった条件で決まってしまうだなんて。
あまりにも残酷で夢がないですよね。

とても乱暴な言い方だけど、あの時は心から「こんな世界は間違っている」と思いました。
でもわたしの手の届く範囲のことは限界がある。

だったら、今ある「お金」「学歴」「職歴」など一般的な評価軸とは別に、「価値を感じた人が自由に評価することのできる仕組み」すなわち「価値ある行動をする人を直接応援する仕組み」を提供する。
社会をよくするために頑張っている人を助けることができれば、この社会は変わっていくのではないかと思ったんです。

 

えってぃー
えってぃー

そんな想いがあって、誰かを助ける人を助ける仕組みをつくったんですね。

ビスケットに込めた想い

1人でも応援してくれる人がいる

清水:ビスケットを作るにあたって、周りの人達にそのことを話すと
ですがほとんどの人に「起業なんて無理だ」「バカなことを言ってるんじゃないよ」「おまえに出来るわけがない」と、散々に言われました。
でも1人だけ「いいと思う。いろんな世界を見てきたからこそ、できることがあるよ」と言ってくれた人がいたんです。

本当に1人応援してくれる人がいるというだけで嬉しかったですね。

もちろんまずは自分のやる事を自分で信じることが大前提ではありますが、やはり信用してくれる人が1人でもいることは心の支えにもなります。

クリエイター、NPO、活動家など、1人で頑張っている人がいます。
新しいことに挑戦する人、価値がわかりづらいことに挑戦する人、きっと孤独がつきまとうと思うのですが、そんなに1人で頑張らなくてもいいじゃないかと思います。
信用してくれる人と一緒にあゆみを進めても良いのではないかと。

インタビュー-ビスケット04
「ビスケット」サービス本体より。

 

えってぃー
えってぃー

1人でも応援してくれるフォロワーがいると、心強いですよね

清水:そうです。それはまさに、わたしが経験したことでした。

起業しようと思ったときは本当に大変でした。
先輩起業家に話ききにいったら一服盛られそうになったり、他にもよくある話ですが電気が止まったり、入るはずの売掛金が入らなかったり、人がやめてしまったりと……様々なことがありました。
でもそのたび、周りの人たちに手をとって貰いました。
ときには話を聞いてもらったり、ときにはいっぱいのごはんをご馳走になったり。
お金だけではなくて、その人のあたたかさや信用を分けてもらうことで、今もこうして活動を続けることが出来ているのだと思います。
本当に出会いの運には恵まれていて、感謝しかありません。

お世話になった方には引き続き報告相談をさせて頂いています。
ただ、とても感謝は返しきれないですね。

もしいつか、その中の誰かが困った時に今度は自分が手をとれるように、また他の誰かが困った時、自分がいつかしてもらったことが出来るように、今は日々出来ることを増やすしかないですね。
まずは、ビスケットを通じて幸せになって貰える人がひとりでも増えるようがんばります。

インタビュー-ビスケット05

「ビスケット」サービス本体より。
自分のページには、いま行なっている企画の文章やリンクを複数掲載することができる

誰かにビスケットを渡す感覚で応援を

清水:社会全体をよくしたい、今日と同じ理由で涙を流す人がひとりでも減ったらいいなとは思っていますが、そのためにはまず、自分の視界に入るゼロ距離の人のために出来ることをするしかないのではないかと思っています。

一般的な評価を持ち合わせていなくても、本当に身近な人たちの信用さえあれば、営みを続けることができる。
周囲の方との出会いはわたしにそんなことを教えてくれました。

なので、友達がちょっと困っていたら、助けてあげるとか。
みんなが手を差し伸べることができたら、社会全体もどんどんよくなっていくんじゃないか、と思います。
ビスケットもそんな気軽な気持ちで使ってほしいんです。

繰り返しになりますがビスケットは、友達にお菓子やお土産を渡す感覚で使ってもらいたいです。
飴とかガムといったお菓子をあげるときって、見返りを求めませんよね。
ビスケット1枚は、見返りなく誰かにあげることができる最小単位です。

みんながビスケットを渡しあったら、自分だけでビスケットを持っているよりずっと幸せ。
分け合うことができたら、自分ひとりで持っているだけでは享受できなかった価値が、誰かに託したことで現実のものになるのではないでしょうか。

 

えってぃー
えってぃー

社会貢献というとものすごく高尚なものと思われてしまいますが、そうではなくてビスケット1枚ほどでいい。

清水:そうです。自分が辛くなるほどの応援って、見返りを求めてしまいますし、長続きしません。
そんなに頑張って応援するものではなくって、自分もビスケットをあげて、誰かにビスケットをもらう。
一方的に偏った支援ではなく、自分の出来る範囲で、参加し応援する。そんな仕組みを作ることができればと思っています。

 

えってぃー
えってぃー

そんなふうにビスケットが循環していく社会になればいいですね。ありがとうございました。

 


協力:株式会社祭

 

 

 

インタビュー記事カテゴリの最新記事

アンケート

 

きふるでは、寄付に関する世の中の捉え方や考え方を集めており、もっとより良い記事を皆さんにお届けしたいと考えています。

 

アンケートご協力いただけると幸いです。

 

アンケートに回答する