「小学校退学」はなぜ起こる?|タイ・ベトナム・カンボジアの教育事情

「小学校退学」はなぜ起こる?|タイ・ベトナム・カンボジアの教育事情

「友達に遊びに誘われるのがイヤだ。うちは貧乏で、遊びに行くお金なんてないから」

「家計を助けるために、中学校を退学しようかと思う」

「家が貧しいから、この先の未来なんてわからない」

 

こう話しているのは、わずか10歳ほどの子どもたち。

世界には、満足に教育を受けることができない子どもがいます。

 

今回は東南アジアの国々の教育事情についてご紹介します。

カンボジア

カンボジア-マップ

カンボジアってどんな国?

カンボジアの首都はプノンペン。人口1,513万人の国です。

 

かつては農業、漁業、林業が産業の中心でしたが、最近では観光産業も盛ん。

アンコール・ワットはクメール建築の最高傑作ともいわれ、世界中から訪れる観光客でいつもにぎわっています。

 

カンボジアの教育

大量虐殺の歴史

アンコールワットのある首都プノンペンには、悲しい歴史を残す博物館もあります。

 

カンボジアでは、1970年カンボジア内戦が勃発。

ポル・ポトが率いるクメール・ルージュという政党が勝利しました。

 

その後クメール・ルージュは教師や医者、資本家は、政府に対して発言力を持つ恐れがあると考え虐殺。

虐殺はどんどん広範囲に及んでいき、「本を読んでいる」というだけで殺されてしまった人のいるとか。

50~300万人が犠牲になったといわれていますが、いまでも正確に判明できていないのが実情です。

その結果、カンボジアには知識を持たない人たちだけが残されてしまいました。

 

教員の不足

1979年にポル・ポト政権は打破。

カンボジア政府の統計によると、経済成長率は、2004年に10%、2005年に13.4%、2006年には10.4%と驚異的なスピードで回復していきました。

しかしこの成長や支援も、農村部までには至っていません。

 

ユニセフの調査によると、2007~2010年の中学校就学率は、男子で36%、女子で32%。

最新の2011~2016年の調査でも男子44%、女子49%となっています。

 

カンボジアでは、知識人が大量に虐殺されたため、教員の不足が課題になっています。

教員が不足を補うため、午前と午後で生徒を入れ替えて授業を行う「二部制授業」が取り入れられていました。

 

義務教育は憲法で受けることが定められており、授業料も無料です。

しかし、農村部では子どもであっても家庭のために働かなければならず、学校にいくことができない子もいます。

在籍はしているものの、出席日数が足りず留年・退学する子どももいます。

 

ユニセフの教育指標によると、「初等学校に入学した児童が最終学年まで残る割合」は、男子で41%、女子で55%となっています。

 

カンボジアの教育データ

義務教育期間は小学校6年間、中学校3年間。

6歳から14歳の子どもが対象になります。

カンボジア-小学校

カンボジアの初等教育データ ユニセフ教育指標子ども白書2017より筆者作成

カンジボジア-中学校

カンボジアの前期中等教育データ ユニセフ教育指標子ども白書2017より筆者作成

▼用語説明

純就学率

一定の教育レベルにおいて、教育を受けるべき年齢の人口総数に対し、実際に教育を受けている(その年齢グループに属する)人の割合。

 

総就学率

一定の教育レベルにおいて、教育を受けるべき年齢の総人口に対し、実際に教育を受けている(年齢にかかわらない)人の割合。

参考:ACCU識字用語集

タイ

タイ-マップ

タイってどんな国?

タイの正式名称は「タイ王国」

首都はバンコクで、人口6,718万人の人々が暮らしています。

 

1997年に始まったアジア通貨危機で、一時的にタイの経済は停滞したものの、いまでは海外企業の進出も増え、高い経済成長率を示しています。

かつては中国が担っていた「世界の工場」としての役割はいま、東南アジアにうつりつつあり、その中でもタイは、世界を代表する工業国となりつつあります。

 

しかし、政権は安定しているとは言い切れません。

タイでは2014年に軍事クーデターが起こり、従来の憲法が廃止。

軍事独自政権が行われました。

 

経済も成長しつつあるものの、タイ全土にその波は広がらず、地方ではいまだに苦しい生活を強いられています。

スラムの数は全国で1,500~2,000。

地域ごとの所得格差も激しく、首都バンコクでは年収約100万なのに対し、平均35万円にしか満たない地域もあるとか。

 

タイの教育

タイでは経済の急成長を背景に、大学をはじめとする高等教育への進学率が高まっています。

 

教育省教育委員会の統計によると、2003年の時点で大学進学率は35.8%。

日本の大学進学率が約50%ですので、日本に迫りくる勢いです。

 

しかし、この動向がみられるのは都市部の話。

タイの学校は国立学校・私立学校であるため、地方自治体が設置した学校はありません。(ただし、バンコク都は学校を設置)。

そのため農村部では、そもそも学校が少なかったり、設備が十分でないことが課題としてあげられています。

 

タイは超がつくほどの学歴社会。

良い仕事につくためには、一流大学出身であることが最低条件として求められます。

都市部のこどもであれば学校に通うことができますが、十分な教育を受けることができなかった農村部の子どもは、学歴がないため就職の幅が狭まってしまいます。

 

タイの教育データ

義務教育期間は小学校6年間、中学校3年間。

6歳から15歳までの9年間。

初等学校が6歳から11歳、前期中等学校が12歳から15歳です。

タイ-小学校

タイの初等教育データ ユニセフ教育指標子ども白書2017より筆者作成

タイ-中学校

タイの前期中等教育データ ユニセフ教育指標子ども白書2017より筆者作成

ベトナム

ベトナム-マップ

ベトナムってどんな国?

ベトナムの正式名称は「ベトナム社会主義共和国」

首都はハノイで、人口9,250万人の国です。

 

ベトナムは、1000年以上前から、海外諸国と関わりを持ってきた国です。

 

かつては中国への朝貢国であり、アヘン戦争以降にはフランス領インドシナとして植民地支配を受けていました。

第二次世界大戦では、ドイツや日本の占領下にありました。

 

1955年から1975年にかけておきたベトナム戦争では、ベトナム全土が戦場になりました。

アメリカ軍が撒いた枯葉剤による後遺症被害者「ベトちゃんドクちゃん」の話は、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 

ベトナムの教育

ベトナムは、1986年に市場開放政策(ドイモイ)を実施して以来、経済成長を続けています。

しかし、一人当たりGDPはそれほど高くなっていません。

 

一人当たりのGDPを見てみると、世界135位。

フィリピン(128位)やブータン(129位)、ラオス(133位)よりも低くなっています。

特に農村部では経済発展の遅れが顕著になっています。

 

ベトナムでは小学校5年、中学校4年、高校3年。

この期間を「普通教育」と呼んでいます。

 

また義務教育は小学校と中学校の9年間とされていますが、ハノイなどの都市部以外では小学校5年間のみとされています。

 

また都市部においても施設の不足が課題となっています。

そのため、午前と午後で生徒を入れ替えて授業を行う「二部制授業」が取り入れられています。

 

ベトナムの教育データ

義務教育期間は初等学校が6歳から11歳、前期中等学校が12歳から15歳です。

ベトナム-小学校

ベトナムの初等教育データ ユニセフ教育指標子ども白書2017より筆者作成

ベトナム-中学校

ベトナムの前期中等教育データ ユニセフ教育指標子ども白書2017より筆者作成

教育を受けられないと、どんな問題がおこるの?

必要な知識を得られない

文字を読むことができない場合、自分の子どもに必要な予防接種の情報など、生活に必要な情報を得ることができません。

書類に名前を記入できないため公共サービスを受けられない、「薬」なのか「農薬」なのかを見分けることができず農薬を服用してしまう、というケースもあります。

 

「文字を読む」という当たり前のような能力は、実は命にもかかわってくるのです。

 

仕事を選ぶことができない

必要な技術や能力を身につけられないので、収入の安定した仕事・希望する仕事に就くことができません。

 

働いても十分な収入を得ることができず、栄養失調となります。

親が病気になってしまうと、その子供が働かなくてはいけなくなり、また学校に行けないこどもが出てきてしまいます。

 

このように、貧困家庭の子どもが大人になっても貧困から抜け出せず、自分の子どもも貧困状態に陥ってしまうことを「貧困の連鎖」「負のスパイラル」といいます。

一度このスパイラルに入ってしまうと、外からの介入がない限り、自然と解消されることはありません。

私たちができること

この負のスパイラルを止めるために、私たちができることとはなんでしょうか。

30年にもわたって、東南アジアの国々を支援している団体があります。

 

それは「公益財団法人民際センター

カンボジア、タイ、ベトナムだけでなく、ミャンマー、ラオスといった、東南アジアの国々を支援しています。

アイキャッチ-東南アジアの教育

公益財団法人民際センターは、1987年、タイ東北地方の41人の子どもへの奨学金提供から始まりました。

はじめ支援していた子どもたちは、いまはもう立派な大人。

看護師や農業技術者など、さまざまな分野で活躍し、国の発展を支えています。

 

いま行われているプロジェクトは、学校建設プロジェクト、図書支援プロジェクト、女子寮建設プロジェクト、通学自転車支援プロジェクト、教師育成プロジェクトなど。

 

奨学生を1対1で支援できる「ダルニー奨学金」では、これまで約40万人の子どもたちを支援してきました。

 

「民際」という言葉には『国ではなく民が主体となること』という意味が込められています。

「民」と「民」を結びつける国際貢献を、私たちは「民際力」と呼ぶそうです。

 

実際に団体を支えているのは27%の企業からの寄付と、73%の個人寄付。

民による民のための教育支援を実現しています。

 

公益財団法人民際センターでは、各国の支部が政府機関・教育機関と連携し「いま必要な支援はなにか?」を常に考えています。

子どもたちの教育のために、必要とされるものは時期や時代によって変化します。

マンスリーサポーターとなって、世界中に教育を届ける公益財団法人民際センターの活動そのものを応援しませんか?

夢をみつけた男の子の話

ベトナムの中学校に通うある男の子は、勉強することを諦めかけていました。

父親のいない彼は「いつ学校をやめなければいけないんだろう」と不安を抱えながら、学校に通っていました。

 

「友達に遊びに誘われるのがイヤだ。うちは貧乏で、遊びに行くお金なんてないから」

これは彼の言葉です。

学校にいくことはおろか、学校で友達と話すことですら嫌になっていたのです。

 

しかし、彼は日本の支援のおかげで、勉強を続けることができました。

 

いまの彼の夢は「高校に行くこと」。

入学したころは成績があまり芳しくなかった彼は「高校に行く」という夢を持ってから、成績をぐんぐん伸ばしていきました。

 

彼は一体どんな大人になるのでしょうか。

大人になった彼は、一体どんな国を作っていくのでしょうか。

 

国の、世界の、これからを担う子どもたちを、あなたも応援しませんか?

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