日本の見えない社会課題 相対的貧困ってどういうもの?

日本の見えない社会課題 相対的貧困ってどういうもの?

「貧困」といえば何を思い出しますか?
飢餓?紛争?孤児?スラム街?
アフリカや東南アジアなど、遠い海外をイメージする人は少なくないのではないでしょうか。

しかし、貧困は海外だけの話だけではありません。
実は日本でも、貧困が問題になっているんです。

日本では6人に1人のこどもが、40人のクラスであれば6.6人のこどもが「相対的貧困」であるとされています。

そもそも”相対的貧困”とはなんなのか、一体どういう問題が起きてくるのか。
今回は日本の見えない社会課題について、フォーカスしていきます。

子どもの貧困とは

日本では、6人に1人の子どもが「相対的貧困」であるとされています。
「相対的貧困」とは、普通の生活水準と比較したとき、下回っている状態のこと。
対象となる国や地域によって、「普通」の基準は変わってくるため「相対的」とされています。

具体的にいうと、世帯1人あたりの手取り収入の中央値を基準として、その半分未満の場合を指します。
金額にすると1人世帯では年収122万円、両親と子ども2人では244万円。
244(万円)÷12(カ月)=20.3(万円)。
つまり、両親と子ども2人の4人家族であれば、月収が20万円以下の家庭であれば「相対的貧困家庭」に当てはまります。

 

子どもの貧困率は、1980年代から上昇傾向にあり、OECD加盟国の中で最悪の水準とされています。
海外の場合、両親が失業しているため収入がない/少ない、というケースがほとんどです。
一方日本の場合は、両親が一生懸命働いていても、収入自体が低く貧困状態になってしまう、という傾向があるそうです。

全国の中でもいち早く、大阪府は大規模な調査を行っています。
経済状況が標準的な家庭の子どもたちと、そうでない子どもたちの比較をし、相対的貧困の家庭の子どもたちは、何を奪われているのかを調査しました。
すると、「病気になっても病院に行くことができない」「新しい服や靴を買えない」「学校に行けない」という問題を抱えていることがわかりました。

相対的貧困の家庭のなかでも、目立っているのはひとり親家庭。
ひとり親家庭の51%が相対的貧困状況にあるとされています。
子育てしながら働くために、正社員ではなくアルバイトやパートなどの非正規の仕事につくケースが多く見られるからです。
また、養育費の不払いも、収入が少ない要因の一つとされています。

見えない貧困といわれる理由

「貧困なんて海外の話じゃないの?」
「そんな子日本にはめったにいないんじゃないの?」と思っても不思議ではありません。
給食があるので、飢餓状態になることはほとんどありません。
日本の貧困は「見えない」のが特徴だからです。

貧困状態にあるとされている子でも「スマートフォン」「ゲーム機」「テレビ」などは持っています。

一見遊ぶためのものに見えても、子どもたちにとっては生活必需品。
仕事で親が家にいない間の連絡手段であったり、学校の友達との会話のネタ集めのために、なくてはならないものだからです。

そのため、本当は貧困状態にある子でも、他の子と見分けることが非常に難しいとされています。

 

課題を年代別にみて

日本の貧困では何が問題となってくるのでしょうか。
それは、「ヒト・モノ・コトの欠如」です。

ヒトとは「人とのつながりの欠如」、モノは服や食事などがあたります。
そしてコトは教育や経験の欠如を表します。

では、各年代でどんな問題がおきてくるのでしょう。
どの世代にも共通する課題もありますが、ここではイメージがしやすいようにあえて年代ごとに区切ってみてみたいと思います。

 

小学生

子どもが健全に成長していくために必要不可欠なのが「家族や人とのつながり」。

収入を少しでも増やすために、仕事を2つ3つ掛け持ちをしている、比較的時給のいい深夜に仕事をするため、子どもが起きている時間は寝ているという家庭の場合、自然と親子の会話は減ってしまいます。

核家族化や地域社会の希薄化が進み、親以外の大人と関わる機会が少なくなっている今日。
学校の先生以外の大人と話すことがない、という子どももいます。

一人で食事をとる「孤食」なんて言葉も、一時期話題になりましたね。

そしてほとんどの小学生が、学校以外の時間に通うのが習い事。
習い事を通して他校の子と仲良くなることができた、という人もいるのではないでしょうか。

習い事の月謝は、公立小学校に通う家庭で1.1万円とされています。
相対的貧困の家庭では、この習い事にかかる費用を支払うことができない、という場合があるのです。

 

中学生

中学生になると、制服や部活用具の購入など授業以外の出費が増えます。
相対的貧困の家庭では、部活動で使う「運動用具」も28.3%が買い与えることができていないと回答しています。

また、卒業後の進路も考えなくてはなりません。
ここでキーワードとなるのが「貧困の連鎖」。

受験対策を学校だけで行うのは簡単ではありません。
しかし、貧困家庭では「学習塾や習い事に通わせることができない」と、進学するときの壁ができてしまいます。

残念ながら日本では、中卒、高卒、大卒で職業選択の幅が限られています。
学費が払えない、学習塾に通えないなどの理由で、十分な教育を受けられなかった場合、おのずと職業の幅も狭まってしまいます。
内閣府「子どもの貧困対策に関する検討会」のデータによると、相対的貧困世帯の子どもが大人になっても相対的貧困になってしまう確率は25%。
つまり4人に1人の子どもが、この負のスパイラルから抜け出せないでいるのです。

要因は、学力や学費以外にも

  • 親も目の前の生活に追われ、子どもの将来のことを考えることができない
  • 子どもも、疲れ切った親をみて、将来に期待を持つことができない

という事例もあります。

メンタル面でのサポートも、必要不可欠となってきます。

 

高校生

高校生になるとアルバイトをすることができます。

高校の授業料無償化もすすみ、教育にはお金がかからないとされていますが、それでも副教材費や修学旅行費、制服購入費、施設維持費までは無償ではありません。

千葉県内の16校の高校で、生徒のアルバイトの実態について行ったアンケート調査が行われました。
アルバイトをしている生徒の目的は「生活費のため」が51%、「進学費用のため」が18%だったそう。

さらに、進学費用をどう払うかという質問に対し「親が全てを払えず、アルバイト代や奨学金で賄う」という人が半数を超えています。

arubaito_highschool

参考:NスぺPlus 子どもに広がる「見えない貧困」

 

大学生

ここまで紹介してきたように、相対的貧困家庭では、進学するのも大変なこと。
それでも頑張って大学に進学することになったときも、壁は立ちはばかってきます。

生活保護を受給している家庭の子どもが大学等に進学する場合、世帯分離をしなくては進学することはできません。
また、それまで支払われていた子どもの分の生活保護費は減額となるため、子どもは自力で生活費と学費を稼がなければなりません。
ちなみに学費は私立大学で1年100万円、国立大学で53万円が必要です。(入学費除く)

奨学金制度もありますが、日本の奨学金のほとんどは、給付型ではなく貸与型のため、「奨学金ではなく学生ローンだ」と海外からも強い批判を受けています。

そのため、国内の進学率が50%なのに対し、生活保護世帯の大学進学は15.2%に留まっています。

※平成25年3月厚労省調べ

また、就職活動では、リクルートスーツ、交通費、証明写真、履歴書など出費が増えます。
個人差はありますが、トータルで10~20万円かかるとされています。
そのため、多くの学生が就職活動に必要な資金を捻出するために、アルバイト、卒業論文、就職活動を同時進行で行っています。

 

こどもの貧困が解決されたとき

これらの問題が解決されたとき、一体どのような社会になるのでしょうか。
日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った調査「子どもの貧困の社会的損失統計」を見てみましょう。

これは、過去に行われた教育格差是正のためのプログラムを受けた場合と受けなかった場合のデータをもとに、貧困世帯の子どもの大学等進学率を推計。

経済格差が教育格差を生み、将来の所得格差につながるという想定のもと、この課題をそのまま放置した場合と、改善する対策を行った場合の2つのシナリオを比較しました。

その結果、学校を卒業したあとの収入増に伴い、納税額、社会保障費用の支払いが増えることがわかりました。
つまり、子どもの貧困問題を解決すると、国家の税収が増えるのです。

子どもの貧困は、家庭だけの話ではなく、国内の経済全体に影響を及ぼす課題であることが明らかになりました。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか

遠い国の、誰かの話と思わず、すぐ近くでおきていることだと知ることが大切です。
この間会った友人や、かつてのクラスメイトも、密かに悩んでいたかもしれません。

自分のまわりにも困っている家族や子どもはいないか、そして自分にできることはなにか。
あなたのできることから考えていきましょう。

社会課題を知るカテゴリの最新記事