ひきこもり支援の歴史と実態|自分らしく生きることができる社会とは

ひきこもり支援の歴史と実態|自分らしく生きることができる社会とは

あなたは「ひきこもり」についてどう思っていますか?

本人の甘え?家族の責任?自分には全然関係がない?

 

いいえ、実は社会が生んだ課題であり、社会全体に関わってくる課題なんです。

 

今回の特集は「ひきこもり」について。

ひきこもり支援の歴史や、本人や家族は一体どんなことに悩んでいるのか、などをご紹介いたします。

 

お話していただいたのは、NPO法人楽の会リーラ事務局スタッフの大橋史信(おおはし  ふみのぶ)さん。

楽の会リーラとは不登校・ひきこもりの親の会をベースに作られたひきこもり支援団体です。

KHJ全国ひきこもり家族会連合の東東京支部にあたります。

 

楽の会リーラについては

同じ生きづらさを抱えてきた仲間のために|楽の会リーラ

の記事をご覧ください!

支援が遅れた歴史

「家族なんだから」論

大橋 ひきこもり支援の歴史ってご存知ですか?

障害者分野は50~60年の歴史があります。

 

ひきこもりは「子ども若者」の分野にあたるのですが、子ども若者分野で一番初めに支援が始まったのは「不登校」です。

それが大体1970~1980年代です。

 

なぜ、障害者支援に比べて子ども若者の支援が遅かったのか。

それは、自己責任論が強かったからです。

 

他にも自己責任論が強い社会課題があるんですが、ご存知ですか?

それは介護の問題。

介護も「家族が取り組むべき問題であって、公的な問題ではない」といわれていました。

 

この自己責任論が、ひきこもりにも長くありました。

 

政治家は子ども若者問題を取り上げなかった

大橋 そして子ども若者の支援が遅れた理由の2つ目

 

それは政治家の人達が、この国の子ども・若者達をどう育てていこうと考える頭がなかった。

子ども若者問題を扱っても選挙時に票にならないから。

高齢者をめぐる施策がどんどん増えたのは、高齢者が一番選挙に行くから。

ようするに投票率の問題ですね。

 

逆に障害者をめぐる問題が50~60年前から取り上げられたのは、家族が声をあげたから。

親の会とか手をつなぐ育成会とかが、デモといった活動をしていった。

障害者の団体は声をあげる団体が多くて、そうなると政治家も動かざるを得なかった。

 

こういう理由があって、子ども若者をめぐる施策って、日本はすごく遅れているのですよ。

障害者をめぐる施策は50~60年歴史があるけど、子ども若者をめぐる施策ってまだ10~15年しか歴史がないのです。

 

社会が変化し、ひきこもりはうまれた

大橋 私たちひきこもりが苦しんでいるのは、世間体・目線・価値観

社会が変わらないと生きづらさからは抜け出せない。

みんなに理解をしてもらって、正しく協力方法を知ってもらわないと、私たちはずっと生きづらいのです。

 

私たちは、ひきこもりは他人事ではないってこと、そして甘えではないってことを知ってもらいたいのです。

みんなひきこもる事情がある、不登校になる事情がある。

 

ちゃんと背景があることを知った上で「私は努力不足だと思う」というのならまだしも、背景も知らずに頭ごなしに批判をされるのは、すごく悲しいのです。

 

だから私たちは最近、つまらないプライドは捨てて、マスコミやメディアで発信をするようにしています。

昔はちょっと変わった人がいても、社会からは受け入れられていたじゃない?

「男はつらいよ」のフーテンの寅さんなんてそのケース。

当時はまだグローバル化になっていなかったから、世の中にゆとりがあった。

 

時代によって、人の許容範囲、つまり世間体・目線・価値観が変わってくるから、ひきこもりは社会の情勢(特に就業環境)でうまれてきたのです。

 

ひきこもり・不登校・精神障害のかかわり

ひきこもりは“状態であるか、要因のひとつとして障害”もあることを主張

大橋 「子ども若者」や「介護」の支援が遅れた理由に、自己責任論が根強くあることを話したけど、そもそも自己責任論自体おかしいってことを知ってもらいたい。

もちろん家族の問題、個人の問題ってこともあるけれど、必ずしもすべてではない。

 

埼玉県に奥山雅久さんという、ひきこもりの子を持つ親子さんがいました。

 

当時、保健所や行政にひきこもっている子どもの相談をしても、全く相手にされなかった。

「家族の問題だ」とか「本人のやる気の問題だ」とか言われて、門前払いだったそう。

「ひきこもりは”状態”であって”病気”ではない」と、社会では考えられていたです。

 

そんななか、奥山が「ひきこもりは、様々な要因でなる状態像。その一つに病気・障害だ」と言い張ったのです。

その後奥山さんは全国を巡り、KHJ全国ひきこもり家族会連合会を設立しました。

 

KHJってとある障害の名前なんですけど、ご存知ですか?

実は「強迫性障害・被害妄想・人格障害」の頭文字なんです。

こうやって奥山さんは「精神疾患をベースにしたひきこもりがいるんだ」ってことを啓発した。

 

ちなみに今は「家族・ひきこもり・Japan」に変わりました。

「世界で唯一の全国組織の家族会」という意味です。

 

お互い学びあったり助け合える

大橋 奥山さんの言う通り、ひきこもりの中には精神疾患を患っている人もいます。

不登校からひきこもりになっていった人もいます。

 

けれど、実は不登校の家族会、精神障害者の家族会は、実はひきこもりの家族それぞれは互いに、関わる機会があまりないです。

むしろ仲が悪いと言ってもいいくらい。

これってどうしてだと思う?

 

障害者の家族会で考えてみて。

家族会のなかでも、親同士仲が悪かったりするでしょう?

僕が思うに、子どもの障害程度が軽い親は重い親を軽んじ、子どもの障害程度が重い親は軽い親を妬んでしまう。

 

同じことが、業界単位でもおこるの。

不登校の家族会からひきこもりの家族会をみると「うちの子はそんな長期化しないし、させないし」。

ひきこもりの家族会から不登校の家族会をみると「あんたはまだ若いんだからなんとかしろよ。こっちは親が80歳、子どもは50歳だぞ」と、となる。

 

精神障害者の家族会からも「ひきこもりなんて甘い。暴言・暴力が必ず起こるとは限らないでしょ!」と言われます。

 

けれど、一般的に40歳以上で、10年以上ひきこもっているご本人の生きづらさのベースには、発達課題があったりします。

ひきこもりって、精神障害者や、不登校と抱えている生きづらさの課題は似ているんですよね。

 

同じようなことで悩んでいるのに、話が合わなくなってしまう。

本当は人生の先輩後輩としてお互い学びあったり助け合えることができるのに。

 

親が死んだらどうしよう問題で協力できる

——いま別々になっているひきこもりの会、不登校の会、精神障害者の会が、ノウハウとかを共有することで、解決に近づいていくような気もしますね。

 

大橋 共有するために、唯一の光があります。

それは親亡き問題。

 

私たちひきこもりの会は、50代のひきこもりと80代の親、という「50-80問題」に直面しています。最近だと100-60問題に出会っています。

 

東京は地域によっては80-50問題なんて甘くて、90-60問題までいっています。

まだ表面上に出てきていないだけで、たくさん隠れていると思います。

 

障害者の親も不登校の親も「自分が歳をとったらどうしよう」「自分が死んだらどうしよう」と深刻に考えています。

この親亡き問題を通して、私たちはお互い、学びあうことができる。

 

逆に、ひきこもりも障害者福祉から学べることがたくさんあります。

 

やはり障害者福祉が一番先に始まったし、「親が死んだらどうしよう」問題を真剣に考えてきた。

ひきこもりは話すことができるし「親が死んでもどうにかなるだろう。自分でなんとかするだろう」と考えられていたのです。

 

新たに浮かび上がったひきこもり問題

就労経験のあるひきこもり

大橋 いま世の中ではいろいろなひきこもりが叫ばれています。

 

例えば就労経験のあるひきこもり。

職場でパワハラ、セクハラにあってしまうケースや、わたしのように大人になって発達障害があることがわかるケースです。

 

そして介護を理由にしたひきこもり。

親をサポートするために仕事をやめて、親の介護が長引いてしまって等で、社会復帰のきっかけ、タイミングを逃し、そのままひきこもり長期化してしまうケースです。

 

「兄弟姉妹なんだから」問題

大橋 実は、親以外にも苦しむ人がいます。

それは兄弟姉妹。

これは障害をもった兄弟姉妹と一緒ですね。

 

ひきこもりの兄弟がいるから結婚できない、離婚させられてしまう、家族関係が悪いから 里帰りができない、という事例が未だにあります。

 

楽の会リーラでは電話相談をしているのですが、実はうちへの相談で多いのが兄弟姉妹からの相談なんです。

話を聞いていると、障害がある兄弟姉妹もひきこもりを持つ兄弟姉妹も、本人と同じ親に 育てられているから、親に対する不平不満を持っているケースが多いんです。

 

その不平不満をクリアにできていないのに、親が亡くなったあとに「家族(兄弟姉妹)なんだからなんとかしなさい」という「なんだから問題」がでてくる。

これも世間体・目線・価値観にさいなまれ、支援せざるを得ない。

 

「もう親が亡くなっていて、親が何もしなかったので裁判沙汰になっています」

「親は生きていますが、何十年もひきこもっているのに親が、なにもしません。私は、どうすれば良いのでしょう」という悲痛の叫びをききます。

 

ひきこもり等生きづらさを抱えた者は選ばれし者

ひきこもりは選ばれた戦士である

大橋 わたしは、ひきこもりを選ばれた戦士だと思っています。

誰だって好きで、ひきこもったり、不登校になるわけではありません。

本当はしたくないんです。

 

人は命の宿題、つまり命題を持っています。

神様が、世の中に人を送り出すときに「この人にこの宿題を与えても大丈夫」と考えて、与えてくれるわけです。

 

人によっては、前世で悪いことをしたからと考えるかもしれませんが、わたしは「この子ならこの宿題を任せても大丈夫。この親ならこの子を任せても大丈夫」と考えるわけです。

だって、「子は神様からの授かりもの」というでしょう?

わたしたちひきこもり等生きづらさを抱えた者は、試されているのですね。

 

ひきこもりは原石である

大橋 私の考えでは、LGBTと発達障害とひきこもりが社会を変えると思っています。

なぜなら彼らは、いままでとは違った価値観でものを見ることができて、比較的まじめな性格。

彼らは原石だと思っています。

 

けれど、社会の人達が、彼らへの理解と協力方法を知らないから、彼らは活躍できていません。

 

自分の世界を持っていたり、信じているものが強い人がいます。

それをマイナスではなくプラスに置き換えられるか、社会が彼らを受け入れることができるか。

また、生きづらさを抱えた私たち当事者も、自分たちの想いを社会に発信し、相互理解が出来る環境をいかに作っていくのか。

これが、誰もが自分らしく生きやすい社会のために、必要なものです。

 

編集後記

社会が一人ひとりの個性を受け入れていくことで、生きづらさを抱える人達は減っていきます。

そして、お互いすれ違ってしまっているひきこもり・不登校・精神障害の家族会も、お互いを受け入れていくことで、解決の糸口がつかめてくるのでは、と感じました。

 

お話をしてくださった大橋さんが、スタッフを務める「NPO法人楽の会リーラ」は、KHJ全国ひきこもり家族会連合会の東東京支部にあたります。

 

なぜ全国だけでなく地域の支援が必要なのでしょう?

その続きは

同じ生きづらさを抱えてきた仲間のために|楽の会リーラ

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団体紹介-楽の会リーラ

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